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高齢の親に免許を返納させる効果的な説得方法 大事なことはプライドを傷つけないこと

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最近、高齢者の運転ミスによる死傷事故の報道をよく目にします。

先日も茅ヶ崎で90歳の女性が赤信号を無視して交差点に突っ込んで4人の死傷者が出てしまう痛ましい事故がありました。

「赤信号とわかっていたが、歩行者が渡り始めていなかったのでいけると思った」といった供述から、運転者の判断力が正常だったのか疑問符がつく状況だったことが伺えます。

先日は義父(70代中盤)が高齢者講習の予約が取りづらい話を書きましたが、

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90歳であれば高齢者講習を受ける前に認知機能検査を受けており、免許を所持しているということは認知機能検査を「心配なし」もしくは「少し低くなっている」でパスしているはずです。

それでもこういった事故を起こしてしまうのであれば、高齢者講習時のチェックだけでなく免許の自主返納についてもっと積極的なアプローチを取るべきかもしれません。

「ウチの親、高齢なのに免許返納の話をしても全然聞いてくれない」「俺は大丈夫だよ、って他人事のようだ」という声もよく聞きます。

今回は僕の実父(80代)が免許を返納するまでの経緯と、説得するときのポイントについて書きたいと思います。

実家に帰る度に車がボロボロになっている

きっかけは実家への帰省でした。

ここのところ親族の不幸が相次いで実家に行く機会が増えたのですが、どうもここ最近、父の車(軽自動車)が帰省する度にあちこち痛んでいるのです。

同居している兄に聞くと、2~3年ぐらい前からちょいちょいバンパーをどこかに擦るようになったらしく、初めは知り合いの板金屋で修理して隠していたのが、最近では直す間もなくぶつけるからそのままにしているようだ、と。

父は建築業の一人親方だったこともあって、現役時代はトラック、ダンプ、ショベル(バックホー)も運転し、若いときには修行先の大阪から実家までW1で帰ってきていたぐらい、車やバイクの運転には自信を持っていました。

時折、運転自慢が鼻につくところがありましたが、それでもそんな父が軽自動車をあちこちぶつけるとは、誰しも老いには逆らえないことを思い知らされます。

車がキズだらけになる分にはまだいいのですが、このまま放置しておくといつか人身事故を起こしてしまうんじゃないかと思い、免許を返納するよう兄と説得することにしました。

いかにプライドを傷つけないように説得するか?が鍵

説得する話はいきなり決めたわけじゃなくて、兄は数年前から「もう歳なんだからあまり運転しないで」「免許返納したらどうか」と車のキズを見るたびに進言していたようです。

そうは言っても職人上がりの父ですから、そんな進言をまともに聞くわけもなく「大丈夫だって。ちょっと擦ったぐらいでガタガタ言うな」と取り付く島もありません。

現役時代は自慢するぐらい運転に自信があった人なので、いくら老いを自覚しているとは言え、息子から歳だの免許返納しろだの何だの言われるとカチンと来てしまったことは容易に想像がつきます。

そこで兄から

「俺たちは一緒に住んでいるせいか、話をするとついケンカになってしまう」
「お前のほうから説得してみてくれないか」

と言われ、親戚の葬儀の翌日に説得してみました。

結果から言うと、最初からすんなり同意はしなかったものの、丁寧に説得することで免許返納に応じてくれました。

そのときに気をつけたことがこの4つです。

1.プライドを傷つけない

これはお年寄り全般に言えることですが、頭ごなしに「年寄り扱い」されると意固地になってしまい、その後何を言っても全く聞かなくなってしまいます。

これは我々現役世代でもそうですが、若い人にオジサン/オバサン扱いされるとカチンとくることとさほど違いがありません。

「もう歳なんだからさ、運転するのを辞めたら」
「いつまでも若いつもりで運転してちゃ危ないよ」
「車で出かけるよりも、家で孫と遊んだほうが楽しいでしょ」

なんて言うのは最悪です。

だってもし自分が逆の立場だったら相当ムカつきますよね、息子/娘にこんなこと言われたら。

そのため、説得にあたっては相手のプライドを傷つけずに、老化が運転に及ぼす影響を伝えるようにします。

・75歳以上の高齢ドライバーによる死傷事故は年間400件以上もあること
・認知・判断機能の衰えによりアクセル/ブレーキの踏み間違えが多いこと

最近起きた高齢者ドライバーによる死傷事故の例を説明すると、身近に感じて胸に響くようでした。

アクセル/ブレーキの踏み間違えで死傷事故を起こすと、どんなに優秀な弁護士をつけたとしても実刑は免れませんし、70歳過ぎて入る拘置所、刑務所は体力的にも精神的にも相当厳しいです。

せっかくこの歳まで大病を乗り越えて引退後の人生を楽しんでいるのに、たった一度の操作の誤りで余生を刑務所で過ごすなんてあまりにも寂しすぎます。

2.家族全員で心配する

僕の一回目の説得ではいろいろ思うところがあったようですが、それでも「他の人はそうかもしれないが、俺は違う」などと言って素直に返納に応じませんでした。

その後、弟、母方の叔母、甥、姪に説得されるうちに徐々に心変わりしていきました。

ポイントは

・みんなで一斉に責めない。順番に日を改めて説得すること
・免許返納の話ばかりしないこと。

もちろん免許返納の話が主題ではありますが、昔話や子供の頃の話を交えて笑い話をしながら「大事な人だからみんな心配してるんだよ」というスタンスで話をすると、一歩引いて考えてくれるみたいでした。

特に父は老人性難聴のせいか同居している兄夫婦や孫とのコミュニケーションが薄く、久しぶりに親戚と話をして自分の想いなどを聞いてもらえたことで、孤独感が和らいだようです。

「家族、親戚一同が気にしてくれている」ということが頑固な態度を和らげてくれました。

3.費用対効果を説明する

父は山遊びが好きなので、車の主な用途は近くの里山までの足として使うことですが、最近では週に2回いくかどうか、という頻度です。

30万で購入したオプションが全く無いスズキアルトですが、維持費はそれなりにかかります。

現役世代であればさほど苦にならない軽自動車の維持費も、自営業だった父の年金ではかなりの負担になるはずです。

しかしそれでも運転することにこだわっているのは、運転自体が「生き甲斐」になっている部分があるからです。

というのも、上でも書いたように現場仕事でも重機を操って重宝された(らしい)ので、人一倍運転技術には自信があった人です。

免許を返納するということは、大げさに言えば現役時代に仕事仲間や取引先、お客さんから得ていた評価を捨てることになるわけで、それは過去の自分を捨てることにつながってしまうわけです。

周りが「そんなことないよ」と言っても、本人にはそう感じてしまうのでしょう。

とは言っても車を維持するにはそれなりのコストがかかりますから、任意保険、自動車税、油脂類、タイヤ、車検、ガソリン代など、月々いくらかかるのかを試算し、それが月々の年金と照らし合わせてどのくらい占めているのかを見せて説明するようにしました。

その点、父は自営業だったこともあって、コストの話にはあっさり「確かにこれじゃ維持費のほうが高くつくな」と理解を示したのです。

父の中でも整理したいところがあるらしく、4月一杯は運転して、5月連休明けに免許を返納することで納得し、約束通りGW明けに免許を返納しました。

4.代替交通機関について

とは言っても車が無くなって困るのは父自身です。ふんだんにタクシーを使えるほど年金をもらっていません。

そのため、代替交通機関をどうするかは説得した家族で調べて上げる必要があります。

大体どこの市町村でも高齢者用に安い金額で公共交通機関が乗り放題となるシルバーパスを発行しています。

東京都の場合は70歳以上の方に都内の大部分のバスが乗り放題となるシルバーパス(年額20,510円)が発行されるので、バス網が発達している都市部ではかなりお得です。

ただ地方だとバスが1時間に1本とか、過疎地になると2時間に1本とかザラですから、実用的なのかどうかは検討する必要があります。

まとめ

高齢者の説得は

・プライドを傷つけない
・よく話を聞いてあげる

これに尽きます。

例え同居していても、お年寄りはほぼ例外なく孤独感を持っています。

妻や夫に先立たれ、同級生や友人も亡くなっていって周囲から消えていきます。

いくら日本人の平均寿命が85歳とかいっても、現に今の80代の方のほとんどが夫婦、友人の多くを失う経験をしています。

この喪失感は、我々現役世代の想像を遥かに超えており、当人になってみないとわからない感覚でしょう。

私達はとかく「年寄りは手厚い年金を受けて裕福に暮らしている」と思いがちですが、お金があっても満たされていないのが今の高齢者です。

人に頼られると孤独感を解消できるために、振り込め詐欺の危険察知度が下がってつい引っかかってしまったり、パートナー、同級生、仲間にどんどん先立たれ、若い世代から疎まれれば、否が応でもひねくれた考えを持ってしまうのは仕方ありません。

正直、僕のやり方が正しかったのかはわかりません。

もっとスマートな説得方法があるのかもしれませんが、大事なことは、高齢者を年寄り扱いせず人生の先輩として真摯に接すれば、意固地になった気持ちを解きほぐすことができますから、丁寧に、そして感情的・威圧的にならずに説得にあたることがいい結果につながります。
 

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