バイク屋さんは何でも全て整備できるわけではない。メンテナンスの二次外注とは?

先日、こんな話を聞いたんですね。

「あそこのバイク屋は焼き付いたエンジンを治せないからダメなバイク屋だ」

聞いてみたら、オイル漏れしたまま走り続けてエンジンを焼き付かせてしまったらしく近所のバイク屋に修理を依頼したとのこと。

そのバイク屋はエンジンを下ろして中を開けて状態を確認したら、修理を専門業者に二次外注したらしい。

つまり彼が言うには「あそこのバイク屋は技術が無いから自分のところでで治せない、だからダメなバイク屋」だと。

いやいやちょっと待って。それは違うぞ、と。

自動車・オートバイは分業制

恐らく一般の人は、ディーラー、整備工場、バイク販売店などは「車・バイクに関してはどんな整備もできる」と思っている人が多いと思います。

ちなみにウチのカミさんも「え?バイク屋さんなんだからエンジンを全部バラバラにして組み上げるなんて普通に出来るんでしょ?無い部品作ったりとか。」と言っていました。

整備の世界は奥が深く、車やバイクのことを全て自社で対応できる業者は数えるほどしかいません。

ほとんどの業者は、

1.軽整備のみ(販売メイン)
2.一般整備のみ(販売&メンテ)
3.フレームからエンジンパーツまで作れるカスタムビルダー
4.内燃機専門
5.塗装専門

と分業されているのが一般的です。

冒頭の話で言うと、修理に出したバイク屋さんは恐らく1.か2.のお店で、焼き付きがシリンダーまで被害が及んだために4.の内燃機屋さんに修理を外注したわけです。

つまり2.のバイク屋さんに技術が無いというより、専門業者に頼んだほうが「安くて正確で早い」という経済的合理性からそうしたのに過ぎません。

「内燃機屋」とは一般には聞き慣れない言葉ですが、自動車業界にはエンジン内部の加工・修理を専門に手がける業者がおり、車・バイクのみならず、小型船舶、農機具など、内燃機関であれば手広く対応しています。

2.のバイク屋さんでも、ある程度の経験があるメカニックであればどこをどうすれば治るのかは知っています。

しかし、焼き付いたシリンダーを修正するにはボーリングマシンでシリンダ内を削る必要があるのですが、一般のバイク屋さんでボーリングマシンを置いているところはまずありません。年に何台も焼き付きで入庫することはありませんからね。

一方で業界で名を馳せている著名なカスタムビルダーであれば、旧車のレストアやボアアップなどのカスタム依頼が全国から来るので、内燃機(エンジン)整備出来るようボーリングマシンやホーニングマシンを揃えているところもあります。

こういったショップであれば、内燃機屋に外注せずに自社で修理してしまうことが多いです。

かかりつけ医と大学病院との関係に置き換えるとわかりやすい

こういった専門分野での分業は、かかりつけ医と大学病院(専門医)の関係に置き換えるとわかりやすいと思います。

普通は、病気の症状が出たらまずは自宅近くのかかりつけ医(内科)のところに行きますよね?

でもかかりつけ医のところで診断がつかない、もしくは治療できない症状の場合は、専門医のところで検査・治療してもらうよう、紹介状を書くのが一般的です。

例えば、背中に大きなおできが出て痛くてかかりつけ医に行くとしましょう。

内科医は脂肪や毛根が化膿した粉瘤(膿が溜る)と診断したけど、大きく切開する必要があるので整形外科に紹介状を書きました。

このかかりつけ医はダメな医者でしょうか?

この医者は決してダメな医者なのではなく、自分より上手に綺麗に処置してくれる専門医に依頼したほうが早くて綺麗に治ると判断したので紹介状を書いたわけです。

中には研修医時代に外科的処置が得意だったから自分で処置をする内科医もいるかもしれません。

同じように、レースメカニック上がりだからエンジン内部まで自分でやったほうが早くて安い、というバイク屋さんも中にはいるかもしれません。

つまり、自分のところで出来ない、もしくは得意ではない作業を外注することは決してダメなことではありません。

むしろエンジン加工からパーツ製作まで行いながら、車検整備や納車整備までできるバイク屋さんのほうが珍しいのです。

外注化される作業とは

一般的にはこんな作業を専門業者に外注することが多いです。

内燃機(エンジン)

上でも説明したように、焼き付いたシリンダーの修正やボアアップ、ポート研磨やシリンダヘッド加工など、エンジン内部を加工する必要があるときは、内燃機屋さんに外注するケースが多いです。

エンジンの加工にはボーリングマシンやNCフライス盤が必要ですから、街のバイク屋さんでこれらの設備を揃えるのはかなり大変です。

言ってみればかかりつけ医のところにCTスキャンやMRIを置いても使い道が無いのと同じです。

逆に内燃機専門業者が数多く存在するということは、それなりに需要があることの裏返しでもあります。

サスペンション

ほとんどのオートバイのフロントサスペンションはバイク屋さんでメンテナンス可能ですが、リアサスペンションに関しては分解整備できないものが意外と多いです。

そうなると、ヘタったリアサスは新品交換しかありませんが、世の中にはサスペンションのオーバーホールを専門でやる業者もいます。

当然ですが新品を購入するよりも安くオーバーホールできますから、そういった専門業者に発注することはよくあります。

板金・塗装

転倒してタンクが凹んだ、カウルが割れた、といった板金修理は普通バイク屋さんではやりません。

というのも、キズを修復したりタンクの凹みを整えたりすることはできても、塗料を揃えているバイク屋さんはまずないからです。

車もバイクもそうですが、車両に使われている塗料は様々な色を混ぜて作り出しています。

純正カラーのカラーデータを入手すれば、何色を何グラム調合すればその色を作れるのかがわかりますが、調合するためにはそれだけの塗料の種類を在庫しておく必要があります。

もうそうなると塗装専門店じゃないと採算が取れません。

また塗装には専用の塗装ブースが無いと綺麗な仕上りにできません。

車の板金修理ってDIYできるの?結構大変です...っと言うか、未経験者はまずキレイに仕上がりません
車の板金修理ってDIYできるの?結構大変です...っと言うか、未経験者はまずキレイに仕上がりません
車に乗っていると、いくら気をつけてもほんのちょっとぶつけてしまったり、小さなキズなどが出来てしまいますよね。 もちろん板金屋さ...

著名なカスタムショップでも塗装だけは外注しているところがほとんどですね。

メッキ

メッキ加工する場合は、ドブ漬けするメッキ槽や、中にいれる化学薬品を調合したメッキ液などが必要で、結構大掛かりな設備が必要です。

クラシック系モデルのバイクにはメッキパーツが多く使われており、そういったメッキパーツの補修を自前でやっている修理業者はまず無いと思います。

普通はメッキ業者にお願いしたほうが「安くて綺麗で早い」です。

まとめ

・エンジン加工から修理まですべてをやれるバイク屋はほとんどない
・整備や加工は専門業者によって分業されている
・街のバイク屋は「かかりつけ医」、専門業者は大学病院の「専門医」みたいなもの

かかりつけ医と整備屋さんで決定的に違うのは、かかりつけ医は紹介状を書いて専門医に渡したら仕事が終わりますが、整備屋さんは専門業者に依頼したらその作業の責任をお客さんに対して持つということでしょう。

どういうことかというと、焼き付いたエンジンを内燃機屋さんに外注して、仕上がってきたエンジンが加工不良で動作が今ひとつだった場合、お客さんに対して「頼んだ内燃機屋がヘボでダメでした」とは言えません。

つまり外注から上がってきた仕事をチェックして受入する必要があるということです。

ユーザーに対してワンストップサービスを提供するには、外注とのやりとりや品質コントロールに責任を持たなければならないという点が、かかりつけ医~専門医との関係と異なります。

以前、近所のバイク屋のオジサンが「ウチみたいなバイク屋にカスタムショップやチューニングショップと同じことやってくれって言われても無理」と言ってたのが印象的でした。

雑誌とか見て「こんな風にしたい!」って依頼してくる客がいるんでしょうね。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク